かながわ経済新聞4月号に掲載されました

松岡康彦の産業よもやま話

経営者と景気変動

資本主義社会と景気変動は、切っても切り離せない関係です。需要が伸びることにより利益が最大化し、さらに供給を増やすために、資金が設備投資に回り生産が増えます。そしてまた、利益が増大し賃金が上昇、消費者の懐が豊かになります。このことで消費者マインドが上がり購買意欲が増して需要が喚起されます。これが景気好況の循環です。

一方、この状態が続くと設備が過剰になり、在庫が増えて価格低下が起きます。消費者物価は下がり、企業の利益は低下、賃金上昇が抑えられます。結果として消費(需要)が低迷し不景気になります。

かつてアダム・スミスは「モノの価格と量は需要と供給の交点で決まる」と説きました。このバランスを「神の見えざる手」と言ったのです。素晴らしい発想です。ケインズは「景気循環は需要が低迷することで起きるので、需要を喚起するのに政府が需要をつくることが必要」とも説きました。周知のことだと言われそうですが、あえて書きました。

さて、話はここからです。経営者は近未来経済予測をしながら自社の計画を立てなければなりません。その計画の中に組み入れることで重要なのは「景気変動は必ずある」ということです。日本では消費税3%導入から5%、8%と上がるたびに必ずマイナス景気になっています。今回の10%導入後もGDPが年率換算でマイナス6・5%との発表がありました。

消費税1%は2・5兆円の増税です。「自社技術と製品は、技術革新が続く中で今後どの程度必要とされるのか」「高齢化社会で労働者をどのように確保し技術水準をいかに保っていくか」「資金確保はできているか」など、経営者が熟考すべ
き事柄は多くあります。

新聞やニュース、経済指標、経済評論家、自社の会計分析など、情報はそれなりにありますが、自社のことを詳細に判断してくれる人はどこにもいません。ここからが経営者の実力が問われるところであり、自分自身の力が試される場面です。新型コロナ問題が経営に影響が出ることは間違いありません。まさにみなさま一人一人の実力を発揮する良い舞台です。お互いコロナに負けずに頑張って経営していきましょう。

(湘南デザインCEO/相模原商工会議所工業部会副部会長)