実践!健康経営〜うつを出さない職場づくり〜9月号

ストレスとうつ②

今回は長時間労働とうつ病について話します。長時間労働は月80時間以上が要注意ラインと言われています。なぜ長時間労働がうつ病の発症と関係があるのでしょうか。これもストレスと関係があります。長時間にわたる仕事を通して、緊張状態が続いているために、連続して身体と脳にストレスがかかってきます。
前回も話しましたが、ストレスが全て悪いわけではありません。ただし緊張状態が長時間にわたり続いていることは、活発な活動の指令を出す交感神経が働き続けています。緊張を鎮めリラックスする指令を出す副交感神経との相互作用が働かないことに問題があるのです。
人間には「ホメオスタシス」という生体恒常が働いてます。簡単な例ですが、塩分のある食事を取った場合、水を飲みたくなります。これは塩分濃度を下げる指令が脳から出るからです。まさにホメオスタシスが働いているのです。同じように仕事上で緊張が続いて交感神経が働き続けたら、適度に副交感神経で休める相互作用の働きを促す必要があります。ホメオスタシスが働きますから「疲れた」となるのです。この疲れたというサインは、身体と脳から出る素晴らしい生体恒常性のメッセージといえます。
サラリーマンが同僚と飲んで発散してるのは、ホメオスタシスが働いているのかもしれません。責任感を感じながらの長時間労働により緊張が続くと、身体と脳への交感神経と副交感神経の相互作用による反応が落ちてホメオスタシスが低下することが考えられます。食欲、睡眠低下などの症状が現れてきます。
身体から出るサインを本人だけでなく、職場の上司、同僚、家族が見逃さないことが大切です。このサインはストレス反応ですから、本人と一緒になってストレッサーを取り除くことが必要になります。そのためには日頃から良いコミュニケーションがある職場作りが必須です。
(湘南デザインCEO/産業精神保健機構理事長・松岡康彦)