相模原商工会議所会報9月号に掲載されました

相模原商工会議所会報9月号の「健康特集」にて掲載されました。

「人の気持ちは力を生み出す」【前編】

~「やる気」とは~

一般社団法人 産業精神保健機構 代表理事
公認心理師 精神保健福祉士
松岡 康彦

 

皆さまこんにちは。1年ぶりの再会です。昨年は「ウィズコロナの時代ストレスとどう向き合うか」をテーマに、計3回お話ししました。

さて、現在、国内の新型コロナ感染の5 波を受けつつもワクチン接種が進み、若干の安心感が出てきました。そうした中で、日々の気持ちをどう持ち続ければ健全な心でいられ、来年へとつないでいけるのか―。「人の気持ちは力を生み出す」をテーマに、計3 回シリーズで説明します。

初回は「やる気とは」です。やる気とは、単純に考えると「自らが行動すればよいのでは・・・」と思うかもしれません。ところが、心の持ちようの研究を学習するだけで、いつもの倍の力が発揮できます。

その研究については、米国の心理学者マーティン・セリグマン氏が1967年に提唱した「学習性無力感」が有名です。やる気とは逆だと思うかも知れませんが2000年にはポジティブ心理学につながると、セリグマン氏自身が発表しています。彼はペンシルベニア大学のポジティブ心理学センター所長も務めています。

では、やる気と真逆にある「学習性無力感」とは何でしょうか。

ストレスが重なり、自分ではどうにもならない状態にさらされると、人間は「回避行動」を段々としなくなり、遂には何も行動しない状態になります。セリグマン氏は、犬に電気ショックを与えた実験で証明し、他の動物実験でも同様な症状が出ることを実証しました。

なぜ回避行動をしなくなるのか。何をやってもだめなのだと、自分の意思に追随しないことが分かると「非随伴性」が体得されてしまい、脳が回避行動を指令しなくなるからです。

自分の意思に随伴する行動が伴わなくなるので、無気力となり、やめてしまう訳です。セリグマン氏は「うつ症状に酷似している」と唱えました。

さて、ここからは「やる気とは?」につながる話です。逆境に陥っても諦めないタイプがいるのはなぜでしょうか。

セリグマン氏は「人が幸せに生きること」への思いがあり、楽観主義の気持ちがあるからと唱えました。逆境から正常に戻す力、回復する力を「レジリエンス」といいます。幸福を感じ、小さい成功体験を繰り返すうちに「やる気」が湧いてくるのです。

コロナ禍が1年半も続くのは想定外でした。しかも、まだ先が見えません。しかし、「必ず回復する」と思う気持ちを心に宿すことで、新たなる「やる気」が湧いてくるはずです。皆さまが誰かと日々交流しながら会話し、明るい生活に戻ることを楽観的に期待しています。